腸のための栄養 ” GFO ”

GFOとは?

GFOは、

グルタミン glutamineの“G”
ファイバー(食物繊維)fiberの“F”
オリゴ糖 oligosaccharideの“O”

それぞれの頭文字を組合わせてGFOと呼ばれています。

なぜこの3つの成分の組み合わせ?

グルタミンは小腸粘膜の栄養の60%を占めており小腸粘膜の維持にかかせません。ファイバー(食物繊維)は大腸粘膜に刺激を与え、腸内細菌が食物繊維とオリゴ糖を組み合わせて短鎖脂肪酸を作ります。この短鎖脂肪酸が大腸粘膜の栄養となります。

小腸や大腸のような大きな臓器が、身体の栄養であるブドウ糖を利用してしまうと、たちまち私達は栄養不足に陥ってしまいます。ゆえに、ブドウ糖は小腸や大腸の栄養全体の5%程度を占めるにとどまります。

小腸はブドウ糖を吸収しますが、自らはブドウ糖を利用しないように上手くできてきますよね。大腸も腸内細菌と共存することで、自らの栄養素を産生し利用しています。

GFOの組成

1包15gに含まれる成分

  • グルタミン 3 g
  • 水溶性食物繊維(ポリデキストロース、グアーガム酵素分解物) 5 g
  • オルゴ糖 2.5 g

1日投与量は、1日当たり3包の投与が基本です。1包 ✕ 3回(朝・昼・夜)

GFO使用に当たっての注意点
GFO 1包は、100-150mLの水に溶解して使用します。
1包を100mlに溶解したときの浸透圧は、
400-450 mOsm
1包を150mlに溶解したときの浸透圧は、
260-300 mOsm

*添付文書に記載はされていませんが、1包を50mlに溶解したときには
浸透圧:800-900 mOsmと非常に高い浸透圧となります。

GFOは絶飲食中や経腸栄養が使用できないときに用いられることから、消化管の状況がよくないときに使用されます。そのため栄養剤は、消化管に負担が少ない浸透圧が低い製剤の使用が良いと考えられますが、GFOの浸透圧はそれほど低くありません。そのため、GFOの投与開始時は投与速度に注意する必要があります。

GFOは、どんなときに使う?

腸管切除後や乳び胸、縫合不全の治癒過程にあるときなど、経腸栄養を開始したいと考えているけれど、なかなか経腸栄養が開始できない、でも何か経腸栄養製剤に近いものを投与したいときや、いきなり炭水化物やタンパク質、脂質を含んだ製剤を開始しにくいときなどにGFOが選択されます。

何の為にGFOを使用するのでしょうか?

GFOは経腸製剤ですが、身体の栄養を補う為ではなく、小腸、大腸といった消化管の粘膜を栄養するために使用されます。
GFOにより腸管粘膜の”integrity”を保つことができます。“integrity”とは難しい英単語ですが栄養関係の文献を読んでいると頻回に出てきます。辞書で調べると、“完全な状態、完全性、品位”といった日本語訳があり、英語論文の中では”small bowel barrier integrity“の様に使われます。
しかし、適切な日本語訳がなく、いつもモヤッとした感じとなり、翻訳ソフトでも”小腸バリア完全性“というイマイチな結果を返されます。普段、私はintegrityを”腸管らしさ“と日本語訳しています。

GFOは、今後、栄養を開始できる段階になったら、すぐに経腸栄養投与ができるように消化管、すなわち小腸および大腸のコンディションを整えておくことを目的としています。“小腸らしさ”“大腸らしさ”の維持を目的として使用されます。

どのような機序で消化管のコンディションを整えておくのでしょうか?

まず小腸・大腸粘膜の栄養について考えていく必要があります。それぞれの臓器は身体の中で表面積も大きく、栄養の吸収・消化において重要な役割をもっています。ですが、小腸および大腸のような栄養を吸収する臓器で、3大栄養素の多くを利用してしまうと消化管以外の臓器へグルコースなどを送り届けることができなくなります。そのため小腸・大腸は、身体の中の組織とは異なる栄養素を利用して維持されているのですね。

小腸や大腸の栄養素として、小腸はグルタミン、大腸は短鎖脂肪酸が主たるものとなっています。グルタミンは、アミノ酸のひとつで感染徴候が高いときには需要が増えて、必須アミノ酸の様に扱われます。ショック状態ではグルコースの消化管粘膜での輸送障害が起こりますが、グルタミン輸送は保たれることが報告されており、消化管粘膜の血流維持などに役立っています。
小腸絨毛上皮細胞の先端部の細胞へのエネルギー供給は経腸管的、すなわち腸管側から行われるため、GFOなどのように腸管を使ったグルタミン投与は、経静脈的なグルタミン投与よりも効果的であるとされています。

腸内細菌によって、GFOに含まれる食物繊維とオリゴ糖から短鎖脂肪酸が産生され、大腸粘膜と腸内細菌のエネルギー源となっています。短鎖脂肪酸は免疫的側面も併せ持ち、白血球の消化管粘膜への浸潤を抑制し炎症反応の軽減も示唆されています。短鎖脂肪酸は、お腹がいっぱいになったというシグナルを満腹中枢に送る働きもあわせ持ち、シグナル伝達物質としても注目されています。

GFOは経腸栄養を開始したいけど、開始できないそんなときに、いつか消化管を使用できるときのために”腸管らしさ”を維持しておく経腸栄養製剤と言えるでしょう。

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